【エッセイ】猫飼いさんお悩み講座・第二回「カーテン登り」

【エッセイ】猫飼いさんお悩み講座・第二回「カーテン登り」

By 室長


どうも皆さん、こんにちニャン!

本日は私、ノボリタイ・カーテンダーが、世の猫飼いさんたちのお悩みにお答えしていきたいと思います。

本日のお悩みは「猫のカーテン登り」です。

登りますね、猫。カーテンに登るの好きです。あれは何が楽しいんでしょうか。爪の引っ掛かりが絶妙なんでしょうか。それとも「そこに山があるから登る」的な、登山家のような衝動に駆られるのでしょうか。真相は誰にもわかりません。

猫が元気いっぱいにカーテンを登り下りする姿は微笑ましいものですが、それが先日青山のおしゃれ家具店で買った南蛮渡来の立派なカーテンだったら、ニンゲン側としては少々複雑です。

「あっ」と思ったときには、もう遅い。
猫はすでに山の中腹にいます。

そこで慌てて猫を引き剥がしたり、カーテンを取り外したり、「もう二度と登らせないぞ!」と決意する人もいるでしょう。

そんな皆さんのお悩みにお答えします。

猫はカーテンに登ります。以上。

猫との暮らしで大切なのは、ある程度、猫の好きなようにさせることです。そもそも猫のやることなんて、完全には止められません。

登るなと言えば登る。
入るなと言えば入る。
触るなと言えば触る。
そして「そこだけは吐くなよ」と思った場所で吐く。

だったら猫を変えるより、自分の考え方を変えたほうが早い。要するに、カーテンの一枚や二枚について考えるのはもうやめちゃいなよ、ベイビー、という話です。

そういえば先日、トライアルに出ていた保護猫のヨハンとロッテンマイヤーが、一週間ほどでシェルターに戻ってきました。理由は「粗相をするから」でした。

ええと。

そりゃまあ、粗相くらいするでしょう。

だって知らない家ですよ。知らない人です。知らない匂いです。昨日までのんびり過ごしていた場所から、突然まったく別の世界へ連れてこられたわけです。ニンゲンだって、いきなり知らない家に放り込まれて「今日からここがあなたの家です。くつろいでください」と言われても、そう簡単にはくつろげないでしょう。私なら一か月は押し入れにこもってスマホばかり見ています。

ちなみにこの二頭、シェルターでは一度も粗相をしていませんでした。

もちろん、それぞれの家庭には事情があります。無理なら仕方ありませんし、こちらから強制もいたしません。ただ、私からすると少し勿体ない。

小説を第一章だけ読んで、本棚に戻してしまうようなものだからです。

第一章では主人公の感じが悪いかもしれない。話も動かないし、少し退屈かもしれない。でも第二章、第三章まで進めば、とんでもなく面白くなるかもしれません。第一章で床におしっこをしていた登場人物が、第十章ではかけがえのない存在になっている可能性だってあります。

猫との暮らしも同じです。何が起きるかわからないし、筋書きもありません。こちらの思いどおりには、だいたい進みません。

でも、だからこそ面白い。

猫を受け入れるということは、新しい物語をひとつ受け入れることなのだと思います。

それに、猫がカーテンに嬉々として登るのも、長い猫生の中ではほんの一時です。数年もすれば落ち着いて、やがて一日のほとんどを寝て過ごすようになります。カーテンになんぞ、毛ほども興味を示さなくなります。

そんなふうに歳を重ねた猫の姿を見て、あなたはきっと思うはずです。

「ああ、もう一回くらい登ってくれないかな」と。

爪の跡も、ほつれた糸も、いつの間にか傷ではなく思い出になります。そして猫はたいてい、私たちより先にこの世からいなくなります。

そのとき、傷ひとつないカーテンが残っている人生と、爪あとだらけのカーテンが残っている人生だったら、あなたはどちらの物語を読みたかったと思うでしょうか。

残念ながら、この物語はネトフリ配信ではありません。早送りも巻き戻しもできない。完結するまでに十年以上かかる、たいへんタイパの悪いエンタメです。

それでも、傷ついたカーテンは買い換えればいい。けど、その猫がそのカーテンに登っている今日だけは、あとから買い直すことはできません。

だからまあ、登らせてあげましょうよ。カーテンくらい。
猫が楽しいなら、それでいいじゃないですか。ねえ。だめですかね?

おっと、紙面が尽きてきました。
それではまた次回のお悩みでお会いしましょう。

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ばいにゃん!

(了)

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